8月 20
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(タイトルに「回答」と入っていて,専門家以外の方には何のことやらという感があるかと思うが,)「大学教育の分野別質保証の在り方に関する審議について」と題する依頼を,文部科学省が日本学術会議(学者の権威的組織)に出していて,それについての「回答」が8月17日に公表されたということだ.

回答「大学教育の分野別質保証の在り方について」

日本学術会議会則第2条に基づき表出する政府及び関係機関への回答として、大学教育の分野別質保証の在り方検討委員会において審議の上、第100回幹事会において、その発表を了承されましたので、回答を公表します。

本文はこちら→大学教育の分野別質保証の在り方について

テレビ・新聞では以下のように報道されたもよう.

<毎日新聞>大学生就職:卒業後も3年間は「新卒」に 日本学術会議が提言
<日本経済新聞>大卒後3年間は新卒扱いを 日本学術会議が提言
<NHK>学術会議 大学生採用見直しを

見出しを見ていただければお分かりのように,どの報道機関も,「卒業後も3年間は新卒扱いにするように企業に求めた」という点をメインに報道している.報告書が分厚くて読むのが大変&キャッチーに伝えにくいというのもあるが,

報道機関が,本報告書の枝葉の端をメインに伝える姿勢には疑問を持つ.

こちらは仕事にも関係してきそうなので,この100ページある最終報告書を数時間かけてやっと読み終えた.骨太な大学教育の分析と提言となっている.

「第一部 分野別の質保証の枠組みについて」は,現状分析をしたうえで,分野別に学士課程教育,特に専門教育の質保証するための枠組みを提言している.学問分野別に「参照基準」という「学生が何を身に付けることが期待できるか」を明文化するというチャレンジングな試みを行うことが記されており,今後の策定と運用が注目される.

こういった取り組みの先進事例として英国の”Subject benchmark statements“という基準があるらしく,自分が学んだ経済学のSubject benchmark statementsを見てみた.しかし,「そりゃそうだな」と思う程度で,これが具体的にどのようなカリキュラムや学習方法に繋がるかのイメージは掴めなかった.策定したはいいが,So what? な基準とならないかが懸念される.

「第二部 学士課程の教養教育の在り方について」が,個人的に今回の報告書で最も興味深かった部であった.

私は国内の大学生の頃,「1・2年の教養教育って意味あるの?とりあえず色々な分野を薄く単位とれってだけだよね?大教室でのつまならい講義ばかりで,高校の方がマシだったかもしれない.専門分野に進む前にこの薄っぺらい教養教育をやることに意味はあるのだろうか?さっさと専門分野をやらせてよ」と思っていたクチである.そのように感じていたことの背景・理由がこの報告書でよくわかった.

教養教育と専門教育はそもそも連携しないものだったのだ.教養教育の原点は,米国をモデルとした,民主主義社会を支える市民の育成にあり,専門教育とは独立したものであり,専門教育の準備教育ではなかったのだ.なぜ教養教育が先で専門教育が後なのかという疑問については,教養教育が民主主義社会を支える市民の育成という,すべての学生に必須であることが目的であるから先なだけなのであった.

日本の教養教育は上記点の意義や重要性が抜け落ちた状態で戦後に始まったため,大教室で一方通行の知識伝達型の教育がまかり通っていた(いる?).そして60年以上経ってからやっと原点に戻って教養課程が再構築されるべき!という提言がされているという事態に驚いた..

教養課程の進むべき方向性は明確化されており,お手伝いしている大学含め,この点は色々と参考になるので,回覧.

「第三部 大学と職業との接続の在り方について」の部は,草案から何回か追ってきたので私にとっては新味はないが,この分野に関して包括的に分析・提言している重要な報告書である.決して「卒業後も3年間は新卒扱いにするように企業に求める」といった対処療法がメインの提言になっていない.そして,より大事なのは包括的な現状分析である.現状分析が包括的であるからこそ,抜本的な解決へのトランジションが難しいことがわかるのであるが.


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